ポアソン過程の定常増分性って？意味と証明を解説

どうも！初めましての方は初めまして、初心者のWebサイト勉強のとみーです！

ポアソン過程には、定常増分性という性質があります。

参考 ポアソン過程については、こちらの記事でわかりやすくまとめています。

ポアソン過程とポアソンの極限定理をわかりやすく解説！

どうも！初めましての方は初めまして、初心者のWebサイト勉強のとみーです！ 待ち行列理論では、ポアソン過程と呼ばれる確率過程がよく登場します。 確率過程は、簡単にいうと時刻

https://www.beginner-blogger.com/poisson-process/

, 1, \cdots, t, \cdots$ の確率変数を集...

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とみー

今回は、その定常増分性についてわかりやすくまとめました！

ポアソン過程の定常増分性の前に

ポアソン過程の定常増分性について考える前に、ひとまずポアソン過程について簡単に復習しておきましょう。

ポアソン過程の直感的な理解

詳しくはこちらの記事で解説していますが、ポアソン過程とは

を表す確率過程です。

ポアソン過程の簡単な具体例

例えば、ある店に客が来店するというのは希少事象として考えられるので、時刻 $t$ までに来客した累計人数を $\mathrm{\Lambda }(t)$ とすると、$\mathrm{\Lambda }(t)$ はポアソン過程です。

他にも

といった様々な事象がポアソン過程では考えられます。

とみー

今回は、店に来店した累計客数を $\mathrm{\Lambda }(t)$ として統一します。

ポアソン過程はポアソン分布に従う

ポアソン過程 $\mathrm{\Lambda }(t)$ はポアソン分布 $Pois(\lambda t)$ に従います。数式で書くと

$\mathrm{\Lambda }(t)\sim Pois(\lambda t)$

です。

ここで、$\lambda$ は正のパラメータです。

とみー

復習は以上です！早速定義に移りましょう！

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定常増分性の定義

ポアソン過程 $\mathrm{\Lambda }(t)$ は次で定義される定常増分性を持ちます。

なので、$\mathrm{\Lambda }(t+h)-\mathrm{\Lambda }(t)$ は時刻 $t$ から $t+h$ の間に到着した客数を表します。

とみー

これが $t$ に依存しないということは、ある期間 $h$ の間にどれくらい客が来るかを考えるにあたって、「いつの期間 $h$」かを考える必要がないということです。

簡単な具体的例

例えば、「１時間内に到着した客数」といった場合

など様々なケースが考えられますが、ポアソン過程ではその１時間が「何時から」の１時間であっても関係ありません。

最初の時刻が「何時から」であっても、「１時間」という情報だけがわかれば分析できるのです。

とみー

数学的な定義を見てみると、より理解が深まるはずです。

定常増分の数学的な定義

定常増分性は、数学的には次のように定義されます。

この式が表すのは、

ということです。

とみー

パラメータに $t$ が含まれていないことから、$t$ に依存しないことは明らかですね！

また、パラメータに $h$ が含まれていることから、期間の長さ $h$ には依存することもわかります。

以上で説明は終了です。ここからは証明になるので、興味がある方はじっくり読んでみましょう。

ポアソン過程の定常増分性の証明

証明にあたっては、確率母関数というものを使います。

確率母関数

確率母関数は、整数値を取る確率変数 $X$ に対して以下のように定義されます。

とみー

確率母関数についてはこれだけです！

式変形の際にポアソン過程の独立増分性も使うので、それについても簡単に触れておきましょう。

ポアソン過程の独立増分性

ポアソン過程には、$[a_1,a_2]\cap [b_1,b_2]=\varnothing$ となる $(a_1,a_2,b_1,b_2)\in {\mathbb{R}}^4$ について、

が独立であるという独立増分性があります。

とみー

この性質の詳しい意味については、こちらをご覧ください。

証明

まず、ポアソン過程 $\mathrm{\Lambda }(t)$ は $Pois(\lambda t)$ に従うので、

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t)}(z)& =& \mathbb{E}[z^{\mathrm{\Lambda }(t)}]\\ & =& \sum _{i=0}^{\mathrm{\infty }}\mathbb{P}(\mathrm{\Lambda }(t)=i)z^i\end{array}$

ポアソン分布の確率質量関数は

$\mathbb{P}(\mathrm{\Lambda }(t)=i)={\displaystyle \frac{e^{-\lambda t}(\lambda t{)}^i}{i!}}$

だから

$\begin{array}{rc}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t)}(z)& =\sum _{i=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{e^{-\lambda t}(\lambda t{)}^i}{i!}{z}^i\\ & =e^{-\lambda t}\sum _{i=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(z\lambda t{)}^i}{i!}\end{array}$

ここで、指数関数のマクローリン展開を考えると

$\begin{array}{r}\sum _{i=0}^{\mathrm{\infty }}\frac{(z\lambda t{)}^i}{i!}=e^{z\lambda t}\end{array}$

なので

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t)}(z)& =& e^{-\lambda t}{e}^{z\lambda t}\\ & =& e^{-\lambda t(1–z)}\end{array}$

同様に

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t+h)}(z)& =& e^{-\lambda (t+h)(1–z)}\end{array}$

次に、

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t+h)}(z)& =& \mathbb{E}[z^{\mathrm{\Lambda }(t+h)}]\\ & =& \mathbb{E}[z^{\mathrm{\Lambda }(t)}\cdot z^{\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)}]\end{array}$

で、独立増分性から

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t+h)}(z)& =& \mathbb{E}[z^{\mathrm{\Lambda }(t)}]\mathbb{E}[z^{\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)}]\\ & =& G_{\mathrm{\Lambda }(t)}(z)G_{\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)}(z)\end{array}$

が成り立つ。

以上をまとめると、

$\begin{array}{rcl}{G}_{\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)}(z)& =& \frac{G_{\mathrm{\Lambda }(t+h)}(z)}{G_{\mathrm{\Lambda }(t)}(z)}\\ & =& \frac{e^{-\lambda (t+h)(1–z)}}{e^{-\lambda t(1–z)}}\\ & =& e^{-\lambda h(1–z)}\end{array}$

最後の $e^{-\lambda h(1-z)}$ は $G_{\mathrm{\Lambda }(h)}(z)$ に他ならないので、

$G_{\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)}(z)=G_{\mathrm{\Lambda }(h)}(z)$

つまり、確率変数 $\mathrm{\Lambda }(t+h)–\mathrm{\Lambda }(t)$ は $\mathrm{\Lambda }(h)$ と同じ確率分布に従う。

ポアソン過程 $\mathrm{\Lambda }(h)$ は $Pois(\lambda h)$ に従うので、

$\mathrm{\Lambda }(t+h)-\mathrm{\Lambda }(t)\sim Pois(\lambda h)$

まとめ

今回は、ポアソン過程の定常増分性を解説しました。

とみー

ポアソン過程の基本的な性質として押さえておきましょう！