どうも!初めましての方は初めまして、初心者のWebサイト勉強のとみーです!
待ち行列理論では、ポアソン過程と呼ばれる確率過程がよく登場します。
確率過程は、簡単にいうと時刻 $0, 1, \cdots, t, \cdots$ の確率変数を集めたものです(具体例はこちら)。
今回は、そのポアソン過程についてわかりやすくまとめてみました!
ポアソン過程の定義
ポアソン過程は、
- 独立増分を備え
- ポアソン分布 $Pois(\lambda t)$ に従う
時刻 $t$ に関する計算過程 $\Lambda (t)$ として定義されます。
といってもこれだけではわからないと思うので、以下で詳しく説明します。
計算過程とは
まず、計算過程についてです。
計算過程の定義
確率過程 $\{\Lambda (t) \,|\, t \geq 0\}$ が次の3つを満たすとき、計算過程であるといいます。
- 非負:$\Lambda (t) \geq 0$
- 整数:$\Lambda (t)$ は整数
- 非減少:$t_1 \leq t_2$ について、$\Lambda(t_1) \leq \Lambda(t_2)$
要するに、時間が経つにつれて増えていく(減らない)整数の確率過程です。
具体例を見てみましょう。
計算過程の具体例
例えば、時刻 $t$ までに店に到着した合計客数を $\Lambda (t)$ とすると、$\Lambda (t)$ は計算過程です。
とっても簡単ですね!
独立増分とは
それではポアソン過程の定義に戻って、「独立増分」について見ていきましょう。
独立増分の定義
$[a_1, \; a_2] \cap [b_1, \; b_2] = \varnothing $ となる $(a_1, a_2, b_1, b_2) \in \mathbb{R}^4$ について、
が独立であるとき、$\Lambda$ は独立増分であるといいます。
確率変数 $A, B$ が独立であるとは、
$$P(A \cap B) = P(A) P(B)$$
であることをいいます。
$[a_1, \; a_2] \cap [b_1, \; b_2] = \varnothing$ は、2つの区間 $[a_1, \; a_2], [b_1, \; b_2] $ が重なっていないことを表しています。
独立増分を直感的に理解する
先ほどの「時刻 $t$ までに店に到着した合計客数を $\Lambda (t)$ とする」ケースを考えてみると、独立増分のイメージが掴みやすくなるはずです。
この例の場合、
ですが、ある時間にたくさん客が到着したら、別の時間の客の到着数に影響を及ぼすでしょうか?
行列があるお店には入るのを躊躇ってしまいそうですよね…。
しかし、行列があることを確認している時点でその客はお店に到着していますよね。
このように考えると、
ある時間の到着数と
別の時間の到着数には関係がない
=独立増分である
ことが直感的に理解できるでしょう。
参考 ポアソン過程には、「定常増分性」という似たような名前の性質があります。定常増分性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ポアソン分布とは
ポアソン分布は確率分布の1つです。
確率分布なんていうと難しく考えてしまいがちですが、確率変数の値が特定の関数で表されるというだけです。
ポアソン分布の定義
整数値を取る確率変数 $X$ がポアソン分布に従うとは、あるパラメータ $\lambda (>0)$ に対して
$P(X = k) = \displaystyle \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!}$
が成り立つことをいい($k \in \mathbb{Z}$)、
$X \sim Pois(\lambda)$
のように表します。
上の確率質量関数 $P(X = k)$ は、
を表します。
したがって、平均発生回数が一定の事象がランダムに発生するシステムをモデル化するのに長けています。
さらに、詳しくは下で説明しますが珍しい事象が起こる回数はポアソン分布に従います。
ポアソン過程とポアソン分布
ポアソン分布の定義に従うと、独立増分を備える計算過程 $\Lambda (t)$ が何らかのパラメータ $\lambda > 0$ に対し
$P(\Lambda(t) = k) = \displaystyle \frac{(\lambda t)^k e^{-\lambda t}}{k!}$
が成り立つとき、ポアソン過程であるといえます。
このとき、ポアソン分布のパラメータ $\lambda$ は到着率と呼ばれます。
参考 到着率については、こちらの記事で分かりやすくまとめています。
珍しい事象が起こる回数がポアソン分布に従うということは、ポアソン過程は
ある時刻までに希少現象が発生した回数の総和
という風に説明することができます。
ここまでで、ポアソン過程が数学的にどのように定義されているかなんとなく理解できたと思います。
最後に、なぜポアソン過程が重要なのか、なぜポアソン過程を考える必要があるのかをはっきりさせるために、ポアソンの極限定理について見ていきましょう。
ポアソンの極限定理とは
ポアソンの極限定理とは、簡単にいうと
希少な事象が発生する回数はポアソン分布に従う
という定理です。
希少な事象に関する定理なので「少数の法則」とも呼ばれます。
「希少な事象」というのは、具体的には
などが該当します。
実用上では幅広い事象が「希少」として考えられ、ポアソン過程は多くの事象をモデル化することができます。
数学的な定義
もう少し厳密な話をすると、ポアソンの極限定理は数学的には次のように定義されています。
確率変数 $X$ が2項分布 $B(n, p)$ に従うとし、$\lambda = np$ とする。
このとき、
\begin{eqnarray} P(X = k) &=& {}_n C_k \, p^k (1-p)^{n-k} \\ &=& \frac{n!}{(n-k)!k!} p^k (1-p)^{n-k} \\ &=& \frac{n!}{(n-k)!k!} \left(\frac{\lambda}{n}\right)^k \left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^{n-k} \\ &=& \color{blue}\frac{n(n-1)\cdots (n-k+1)}{n^k} \color{black} \frac{\lambda^k}{k!} \color{red} \left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^n \color{black} / \color{green} \left(1-\frac{\lambda}{n}\right)^k \end{eqnarray}
ここで、$n$ が十分に大きい場合
が成り立つから、
$P(X = k) \approx \displaystyle \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!}$
つまり
$B(n, p) \approx Pois(\lambda)$
が成り立つ。
ポアソンの極限定理のイメージ
具体例を通してイメージをつかみましょう。
このとき、この地域で1年間に雷が落ちる回数 $X$ はポアソン分布 $Pois(3)$ に従います。
1年間に3回落ちるということは、雷が落ちる月もあれば雷が落ちない月もあるということです。
さらに細かく見ていくと、雷が落ちる日もあれば落ちない日もあるということですね!
このように1年を小さな期間に分割していくと、各期間では
のどちらかが発生すると考えられます。
分割してできた期間の数を $n$、雷が落ちる確率を成功確率 $p$ とすると、これは
ことに他なりません。
このようにして見ると、ポアソン分布が2項分布で近似できることがなんとなくイメージできますね!
期間を分割する際、十分に細かく分割しないと1つの期間で2回以上事象が発生してしまい、2項分布に近似できません。例えば、1日に雷が2回以上落ちることは当然あり得るので、今回の例で1年を1日単位に分割するだけでは不十分で、もっと細かく(1秒など)に分割する必要があります。実は、これが「$n$ が十分大きい」という条件に繋がります。
ポアソン過程の性質
ポアソン過程にはいくつか重要な性質があります。
詳しくはそれぞれをクリックした先のページで解説しています。
まとめ
今回は、ポアソン過程(分布)とポアソンの極限定理を解説しました。
待ち行列理論で頻出なので、基礎はしっかり理解しておきたいですね!
コメント