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$$\mathbb{P}(X_{n+1} = j | X_n = i, \color{red}\cdots, X_0 = i_0\color{black}) = \mathbb{P}(X_{n+1} = j | X_n = i)$$
を満たす確率過程はマルコフ連鎖と呼ばれ、確率過程の話の中でよく登場します。
参考 マルコフ連鎖について詳しくはこちら!
今回はその判定法を2つ解説します!
数式が得意な方は判定法①、苦手な方は判定法②を使いましょう。
斉時的なマルコフ連鎖の判定法①
定理
\begin{eqnarray} &&\mathbb{P}(\color{red}X_{n+1}\color{black}=j|X_n=i, X_{n-1}=i_{n-1}, \cdots, X_0=i_0) \\ &=& \mathbb{P}(\color{red}f(\color{blue}\underline{\color{red}X_n}\color{red}, Z_n)\color{black}=j|\color{blue}X_n=i\color{black}, X_{n-1}=i_{n-1}, \cdots, X_0=i_0) \\ &=& \mathbb{P}(f(\color{blue}i\color{black}, Z_n)=j|X_n=i, X_{n-1}=i_{n-1}, \cdots, X_0=i_0) \end{eqnarray}
与えられた条件より
\begin{eqnarray} X_n &=& f(X_{n-1}, Z_{n-1}) \\ &=& f(f(X_{n-2}, Z_{n-2})) \\ &=& \cdots \\ &=& f (\cdots(f(X_0, Z_0), Z_1) \cdots, Z_{n-1}) \end{eqnarray}
が成り立つから、$X_n$ は $X_0, Z_0, \cdots, Z_{n-1}$ の関数である。
よって、$X_n$ は $Z_{\color{red}n}$ とは独立であり、同様にして $\{X_0, \cdots, X_n\}$ はすべて $Z_n$ とは独立であることがわかる。
したがって、条件付き確率の条件は無視できて
\begin{eqnarray} \mathbb{P}(f(i, Z_n)=j|\color{red}X_n=i, X_{n-1}=i_{n-1}, \cdots, X_0=i_0\color{black}) = \mathbb{P}(f(i, Z_n)=j) \end{eqnarray}
となる。ここで、$\mathbb{P} (f(i, Z_n) = j)$ は $i, j$ だけの関数だから、
\begin{eqnarray} \mathbb{P} (f(i, Z_n) = j) &=& \mathbb{P} (X_{n+1} = j | X_n = i) \\ &=& \mathbb{P} (X_{n} = j | X_{n-1} = i)\\ &=& \cdots \\ &=& \mathbb{P} (X_1 = j | X_0 = i) \end{eqnarray}
以上をまとめると、
\begin{eqnarray} \mathbb{P}(X_{n+1}=j|X_n=i, X_{n-1}=i_{n-1}, \cdots, X_0=i_0) &=& \mathbb{P} (X_{n+1} = j | X_n = i) \\ &=& \mathbb{P} (X_{n} = j | X_{n-1} = i)\\ &=& \cdots \\ &=& \mathbb{P} (X_1 = j | X_0 = i) \end{eqnarray}
推移確率
この定理を使うと、状態 $i$ から状態 $j$ への推移確率は
$$p_{ij} = \mathbb{P} (f(i, Z_n) = j)$$
で求められます。
\begin{eqnarray} p_{ij} &=& \mathbb{P} (X_{n+1} = j | X_n = i) \\ &=& \mathbb{P} (f(X_n, Z_n) = j | X_n = i) \\ &=& \mathbb{P} (f(i, Z_n) = j | X_n = i) \\ &=& \mathbb{P} (f(i, Z_n) = j) \\ \end{eqnarray}
例題
定理を適用する例として、ある地域のスマートフォンの修理業者を考えてみましょう。
この地域はとても広いので、毎日どこかで誰かのスマートフォンが故障します。
スマートフォンの持ち主は、故障した次の日の朝に修理業者に修理を依頼しにきます。
ただし、スマートフォンの修理には時間がかかるので、1日1台までしか修理できず、修理が完了するのは夕方ごろになります。
このとき、
としましょう。
独立性の確認
まず、定理を利用するためには、
- $\{Z_n\}$ が独立同分布であること
- $X_0$ と $\{Z_n\}$ が独立であること
を確認しなければなりません。
$\{Z_n\}$ が独立同分布
普通、今日は壊れやすい日だけど明日は壊れにくい日、といった状況は考えにくいですよね。そのため、ここでは毎日スマホは同じくらい壊れやすい($\{Z_n\}$ は同分布)と考えられます。
また、今日は少ししか壊れなかったから明日はたくさん壊れる、といった因果関係も考えにくいです。なので、$\{Z_n\}$ は互いに独立です。
$X_0$ と ${Z_n}$ が独立
さらに、業者の未修理台数とスマホの壊れる個数には何の関係もないので、$X_0$ と $\{Z_n\}$ は互いに独立です。
それでは定理を使うために、$X_{n+1}$ を式で表してみましょう!
$X_n = 0$ の場合
$n$ 日目のお昼の時点で未修理台数が0個の場合、その日は修理を行いません。
そして、次の日の朝には新しく故障したスマホが $Z_n$ 個届きます。
修理が完了するのは夕方なので、$n+1$ 日目のお昼の時点の未修理台数は、
$$X_{n+1} = Z_n$$
となります。
$X_n \geq 1$ の場合
$n$ 日目のお昼の時点で未修理台数が1個以上の場合、その日は修理を行うので、その日の夕方には未修理台数は $X_{n} \, – \, 1$ 個になります。
そして、先ほどの場合と同じように次の日にはまた $Z_n$ 個故障したスマホが届くので、$n+1$ 日目のお昼の時点では、
$$X_{n+1} = X_{n} \, –\, 1 + Z_n$$
となります。
$X_n$ の漸化式
以上を踏まえると、
\begin{eqnarray} X_{n+1} &=& \left \{ \begin{array}{1} Z_n \, &&(X_n = 0)\\ X_n + Z_n \,–\, 1 \, &&(X_n \geq 1) \end{array} \right . \end{eqnarray}
です。よって、どちらの場合も $X_{n+1}$ は $X_n$ と $Z_n$ の関数になっています。
ゆえに、定理より $\{X_n\}$ は(斉時的な)マルコフ連鎖であることがわかります。
斉時的なマルコフ連鎖の判定法②
先ほどの判定法①は数式を使わなければいけないので、少しとっつきにくい部分がありますよね。
実は、数式を使わなくても判定できる方法があります。
それが、次の定理です。
定理
状態遷移図というものが作成できれば、それだけでOKという便利な定理です。
状態遷移図とは
状態遷移図というのは、
をまとめた図です。
ある状態からある状態への矢印(遷移)が書けるということは、
次の状態は1つ前の状態だけで決まる
というマルコフ性の証明です。
また、状態遷移図に時刻 $n$ の情報がないことから分かる通り、状態間の遷移に時刻は関係ないので、これは斉時的なマルコフ連鎖です。
例題
それでは定理を使ってみましょう。題材は、引き続き先ほどのスマホ修理業者です。
1日にスマホが $k$ 個壊れる確率を $q_k$ とすると、$\{Z_n\}$ は独立同分布なので
$$\forall n \in \mathbb{Z}_+, \quad \mathbb{P} (Z_n = k) = q_k$$
です。
$\mathbb{Z}_+$ は0以上の整数の集合です。
この確率を使うと、次のような $\{X_n\}$ の状態遷移図が描けます。
定理から「状態遷移図が描ける=斉時的なマルコフ連鎖」なので、$\{X_n\}$ は斉時的なマルコフ連鎖です。
判定法①の結果と一致していますね。
まとめ
今回は、マルコフ連鎖の判定法をご紹介しました。
状態遷移図が描ける場合は積極的に②の判定法を使いたいですね!
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