どうも!初めましての方は初めまして、初心者のWebサイト勉強のとみーです!
この記事に辿り着いたということは、おそらくみなさんの中には
- フランス留学を検討している
- フランス語の文章中に CM や TD、TP といった単語を目にして気になったから調べてみた
といった方が多いでしょう。
CM・TD・TP は3つともフランスの大学・グランゼコールで行われる授業の形式を指す言葉です。
参考 グランゼコールというのは日本の大学と大学院の中間のような位置にある、フランス独自の教育機関です。
とみーは大学時代2年間グランゼコールに留学していたのですが、そこでの授業の仕組みはまるっきり日本と異なるものでした!
フランスの授業形式
フランスの高等教育(大学・グランゼコール)では、主に3種類の授業形式が存在します。
これらは独立しているのではなく、1つの科目に CM の時間、TD の時間、TP の時間という3つの時間割が用意されています。
ちなみに、CM も TD も TP も1コマあたりの時間は日本の大学とあまり変わらず、1時間30分〜2時間といったところです。
これだけではあまりわからないと思うので、1つずつ見ていきましょう。
CM:Cours Magistraux とは?
「CM:Cours Magistraux」はいわゆる普通の「講義」です。
日本の大学の授業といったら講義が定番ですよね。
数学や物理、情報や制御など、フランスの授業も基本的には講義形式で行われます。講堂や大教室のような広い場所で行われることが多く、収容人数により100〜300人程度です。
大抵教室の前方にスクリーンがあり、先生がスライドを映しながら講義を行う点は日本とあまり変わりません。
数学や物理など、簡単な問題で理解度を確認できるような科目の場合、新しい概念の説明が終わって次の話に進む前に問題演習をすることも一応ありますが、多くの科目は問題演習なしの説明だけで終わります。
とみーの学校では出席点・平常点のような加点形式のものはなかった一方、欠席すれば減点対象とする科目はありました。
特徴としては、欧米の授業に対するイメージ通り発言の積極性が高いことが挙げられます。例えほかに100人の学生がいようと自分が理解できなければ手を挙げて質問をするという学生が多く、先生も質問への答えにしっかり時間を割きます。
理解できなかった学生が1人いる
↓
他にも理解できなかった学生がいる可能性がある
↓
自分の説明に不備があったのだろう
という姿勢の先生が多く、例を出したり色々言い換えたりしてわかりやすくしようと努めてくれるため、授業時間内で疑問がしっかり解決できることも少なくありません。
逆に言うと、授業時間内で解決できなければあっという間に置いていかれてしまうということの裏返しでもあります。
また、質問への回答は当然出席者全員がわかるように行われるため、1人の質問に対して他の学生が追加で質問することや、すでに理解した学生が回答を手助けすることもあり、日本と比べるとかなりアクティブと言えるでしょう。
TD:Travaux Dirigés とは?
CM では問題演習をほとんど行いませんが、それは「TD:Travaux Dirigés」という専用の「演習」時間が用意されているからです。ただし、TD は単に問題を解く時間ではありません。
TD は CM(講義)とは異なり、小さめの教室で10〜30人くらいの小規模で行われます。各教室には先生が1人付いており、先生の指示に従って与えられた問題を解き、時間の限り解答解説まで行います。
イメージとしては、日本の塾や予備校のような感じです。
問題は CM で習った知識を復習するためのものが多いですが、中には CM で習った内容に関連する重要事項や CM で扱いきれなかった内容を補足するための問題に取り組む場合もあります。
性質上 CM よりも先に TD が行われることはまずありません。
TD は自分の理解を深め知識を定着させることが目的なので、問題の出来が成績にかかわることは少ないですが、科目によっては TD の開始時に前回までの CM・TD の内容に関する小テストを行い、その出来が成績に加味される場合があります。また、期末試験は TD で解くような問題が出題されることが多いため、
TD の復習 = 試験勉強
のようになります。
発言・質問の活発さで言うと、具体的な問題に取り組むためつまづきやすいポイントが多い分 TD の方が活発です。
また、TD 自体はテストではないので友達同士で一緒に考えたり、すでに解けた人に教えてもらったりすることも OK で、この機会に仲良くなることもあります。
TP:Travaux Pratiques とは?
「TP:Travaux Pratiques」は「実習」の意味で、CM や TP とは少し毛色が異なり特定の科目にしか存在しません。
例えばプログラミングの科目の場合、CM で基本的なアルゴリズムや言語の文法を学びますが、それを身につけるためには紙面上で問題を解くのではなく、実際にプログラムを書く必要があります。また、電子工作のように専用の機械が必要な場合、小教室や講堂ではなくその機械がある教室で実験のような形で行う必要があります。
このような、専門の機器を用いたりパソコンを使ったりして実際に手を動かしながら行う実験やプログラミングなどの実習が TP です。
アプリ設計のように、数回の TP にわたって同じ課題に取り組むこともあります。
CM や TD は1コマずつ行われるのが多いのに対し、機器のセッティングなどを含めてある程度時間のかかる TP は2コマ連続で行われることが多いです。また、実習の内容によっては1人ではなく、2、3人のグループを作って取り組むこともしばしばあります。
イメージとしては、日本の大学でいうところの理系の実験が近いでしょう。
TD と比べると比較的成績に影響することが多く、実験形式の場合は実験後のレポート、プログラミングやアプリ制作などの場合は成果物を提出することで評価が行われます。
ある程度大掛かりなアプリ・プログラムの場合は、成果物とともに設計を説明するプレゼンを行うことがしばしばあり、この場合はスライドなども合わせて作ることになります。
TP は授業で習ったことが実際にどのように応用できるのかを実践するという側面が強いため、期末試験とは直接関係がない場合もしばしばあります。とはいえ、実際に手を動かして動作を確認できるため直感的な理解を得やすく、理解を深める上では非常に良い機会になっています。
以上の説明で CM・TD・TP について理解ができたでしょうか?
フランスの授業構成
上の方で
CM・TD・TP は独立しているのではなく、1つの科目に CM の時間、TD の時間、TP の時間という3つの時間割が用意されている
と説明しましたが、実際は数回の CM おきに1回 TD が行われるのが一般的です。
ただ、科目によっては1回の CM につき1回 TD が用意されていることもあり、この場合は
CM → TD → CM
というサイクルを繰り返すことになります。
TP は科目によってはそもそもありませんが、ある場合は TD と同様に数回の CM おきに行われることが多いものの、TD よりも時間がかかるため数コマ分使うことも多く、例えば
数回 CM → 1回 TD → 2回 TP → 数回 CM
のようになります。
TD と TP のバランス・時間数
TD と TP のバランス・時間数は科目の性質によって異なります。
例えばプログラミングなど、自分で手を動かしながら学ぶタイプの科目は TP が多めになりますし、数学など、実践があまりなく問題をノートに解き進めて理解していくタイプの科目は TD が多めになります。
また、数学のような難しく抽象的で理解に時間がかかる科目ほど TD の時間が多く取られる傾向にあります。
とみーの留学先では、数学の授業は CM と TD が同じコマ数だけありました。
授業数・勉強量が多い
日本の大学は講義がほとんどで、演習に時間を割く科目というのはあまりないイメージがあります。
あったとしてもフランスの CM と同じく、先に進むためにとりあえず理解しておかなければならないことを整理するための演習時間が講義中に取られるくらいで、演習専用の時間というのは珍しいでしょう。
フランスでいうところの TD や TP などの演習・実習は、自宅で講義を復習する際に自分で行うという前提になっており、その分だけ授業数が少ないわけです。
TP にやや似ているのに実験がありますが、日本の理系の実験は、科目ごとに実験用の時間があるというよりは、「実験」という科目があってその中で決められたテーマに取り組むというのが多いはずです。
一方のフランスは、CM の数を削って TD・TP を設置しているのではなく、日本と同じような CM 数に加えて TD・TPがあります。そのため時間割に空きコマができることは少なく、CM だけでなく TD・TP も自宅で復習しなければいけなくなるため、必然的に勉強量も多くなります。
細かい事情は学校によって変わるのであまり一般化はできませんが、一応アルバイトのようなものは存在するものの、とみーの周りで実際にアルバイトをしている学生はかなり少数で、授業が終わった放課後は習った内容を復習する学生が大半でした。
知り合いにアルバイトをしている人はほんの数人いましたが、彼らはどちらも週1、2時間程度の家庭教師だったため、せいぜいそれくらいが精一杯なのだと思います。
定着が良い
授業数が多いのは大変ですが、習ったら習いっぱなしではなく、しっかり先生が解説をしながら問題を解く機会が与えられているのでその分知識の定着は良いです。
日本の大学でとみーが苦手なものに、「演習が全くないせいでテストに何が出るかがわからないから何を勉強すれば良いのかわからない」というのがありました。
もちろん
それを考えるのが勉強だー!!!
と言われてしまえば身も蓋もないのですが、実のところあまり効率的ではありませんし、ましてや何に使えるのかもよくわからないまま「とりあえず取らされている授業」がこのような感じだと興味も湧かず、「ただやってるだけ」な感じがどうしても拭えないでしょう。
もちろん日本の大学のように、学生が色々なことに挑戦できるだけの自由な時間を確保するシステムにも長所はあるためどちらが良いと結論づけることはできませんが、興味がない科目でも TD や TP を通じて実際にどのように使われているのかを理解することができるフランスの教育システムは、なかなか実用的で教育的効果が高いのではないかなぁと個人的には実感しています。
まとめ
フランスの大学・グランゼコールの授業は、大きく3つの種類があります。
CM で習った内容を TD と TP によってさらに掘り下げ、知識の定着を図るのが一般的な1科目の構成となっています。
CM に加えて TD・TP の時間が増えるため時間割は忙しくなるものの、習った知識を活用する機会が与えられているおかげで、単に知識を詰め込むだけではない実用的な勉強ができる点が日本とは大きく異なります!
コメント